2012年05月23日

 議会議長対象の自治体キャラクター活用の講演会

 議会議長対象の自治体キャラクター活用の講演会 

 兵庫県の宝塚で、ある府県の議会議長対象の自治体キャラクター活用の講演会をやった。 

前日に、宝塚ワシントンホテルに泊まった。武庫川沿いに建っていて、眺めがよく、リラックスできた。 

 ひこにゃんや水木しげるロードの紹介と著作権を中心とした知的財産権処理の話をした。 

 ちょっと、法律の話は難しかったかな。 

 しかし、議長ばかりで、立派な風采の方が多かったな。

地方では、かなりの名士なのであろう。 

 地方の振興の一翼を担えたら幸せである。 

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2010年03月19日

法人の職務著作の成否と同一性保持権の侵害

法人の職務著作の成否と同一性保持権の侵害


◆今回は、職務著作についての判例を取り上げました。この事案では、仕事の上で原告が作成した講習会テキストは公表などの要件を満たさないから職務著作とならない、つまり会社の著作権はないと判断したわけです。


 しかし、そのテキストを元にして、改訂版が作成され使われたわけですが、現行の元社員はそれは複製権の許諾をしていたから、侵害行為はなかったと認定してます。

 著作物の権利帰属についての契約もなく、就業規則にも定めはなかったようです社内で作成される文書については、著作権者をその都度決定しておくのが望ましいでしょう。
 また、特許権と違い従業員に原則著作権がある定めには著作権法はなっていないのですが、この判例をみればわかるように、職務著作の要件を満たさないときは作成社員が著作権者になるでしょう。
 退職社員が青戸から文書の複製権侵害などで訴えるリスクを企業は考えておくべきです。関西の大手電機メーカーでもこれと同じ事件はありましたね。以前に紹介しました。

 ○それでは、以下の判例をお読みください。例によって、細かい事実認定部分は省略して読みやすくしてあります。


◆H18. 2.27 東京地裁 平成17(ワ)1720 著作権 民事訴訟事件

判決
原告    A
被告    高砂熱学工業株式会社(以下「被告会社」という。)
被告    社団法人日本計装工業会(以下「被告工業会」という)

主文

1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

■第1 請求
1 被告らは,原告に対し,連帯して,金600万円を支払え。
2 被告らは,連帯して,別紙2記載の新聞及び雑誌に,同記載の体裁にて,同記載の内容の謝罪広告を各1回掲載せよ。
3 被告工業会は,別紙1記載の各講習資料を廃棄せよ。

■第2 事案の概要
 本件は,被告会社の従業員であった原告が,被告会社在職中に,被告工業会主催の講習において講師を務めた際,講習資料として作成した資料(「平成12年度計装士技術維持講習」のうち,「空調技術の最新動向と計装技術」に係る資料)について著作権を有するとして,被告会社において,原告の後任として上記講習の講師を務めた被告会社従業員をして,原告作成の上記資料の複製等を行って別紙1記載の各講習資料(以下,別紙1記載1の講習資料を「13年度資料」と,別紙1記載2の講習資料を「14年度資料」という。)を作成させ,被告工業会において,複製された資料を配布するなどして,共同して,原告の著作権(複製権,口述権),著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害したと主張して,被告らに対し,民法709条,710条及び719条に基づき,著作権(財産権)の侵害による損害440万円及び著作者人格権の侵害による慰謝料160万円の合計600万円の連帯支払,著作権法115条に基づき,謝罪広告を,被告工業会に対し,著作権法112条2項に基づき,13年度資料及び14年度資料の廃棄を求め,さらに,原告が原告作成の前記資料についての著作権を有することを前提として,被告らが,同資料の複製等を行って収益を得ており,それが不当利得に当たると主張して,選択的に,民法703条に基づき,600万円の連帯支払を求めたのに対し,被告らが,原告作成の前記資料は,職務著作として被告会社が著作者となり,原告は著作者ではない,職務著作でないとしても,その複製について,原告の許諾を受けている等と主張して争っている事案である。

1 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する。)
(1) 当事者
ア 被告会社は,冷暖房,換気,衛生,水道,乾燥,蒸発,燃焼,冷凍,製氷,温湿度調整装置及び一般熱交換装置の設計,監督,工事並びに保守管理等を業とする会社である(弁論の全趣旨)。
イ 被告工業会は,昭和49年に任意団体「計装工業会」として発足し,昭和55年12月13日に,「計装工事業に関する諸問題について調査研究,経営の合理化,技術の向上およびその交流に務め,計装工事業の健全な進歩発展を図り,もって公共の福祉の向上と産業界の発展に寄与すること」を目的とする社団法人として発足した(乙4の1,12,弁論の全趣旨)。被告工業会は,計装工事業の技術の総合的調査研究等の事業を行っている(乙12)。
ウ 原告は,昭和51年11月8日に被告会社に入社し,以来,被告会社東京本店技術部,同設計部,本社技術部,東京本店計装システム部等に所属し,平成17年7月31日,被告会社を退職した者である。
(2) 計装士技術維持講習
ア 昭和59年3月,建設大臣認定資格として計装士の資格制度が発足し,その後,平成13年4月から,同制度が建設業法施行規則17条の2等に基づいて変更され,以降,被告工業会が計装士の資格の認定(計装士技術審査)を行っている(乙4の1,12)。
イ 被告工業会は,計装士の知識及び技術の維持向上のため,被告工業会内部の規程に従って,毎年1回,全国数か所の会場において,計装士技術維持講習(平成13年の改定前の名称は「計装士技術維持講習会」,以下,いずれについても「維持講習」という。)を実施し,同規程により,計装士は,5年ごとに,維持講習を受講しなければならないとされている(乙1,4の1,10の1,12)。
 同規程により,維持講習の内容(範囲)が定められ,被告工業会の研修委員会が維持講習の実施を担当することとされている。被告工業会の研修委員会では,毎年,具体的な講習内容(テーマ),会員企業各社の分担などを決定している。維持講習の講師は,被告工業会の依頼を受けて会員企業から派遣された者(概ね4,5社から1名ずつ)が務め,それぞれの講師が,原則として,同じテーマで5年間継続して講習を担当することとされている(乙4の1,12)。
(3) 平成10年度から平成14年度の維持講習における講師及び講習資料
ア 平成10年度から平成14年度までの維持講習では,5個(平成10年度は4個)のテーマの講習が実施された。このうち,「空調技術の最新動向と計装技術」というテーマの講習(以下「本件講習」という。)について,被告会社から講師が派遣され,平成10年度から平成12年度までは,当時,被告会社東京本店計装システム部(以下,「被告会社計装システム部」という。)に所属していた原告が,平成13年度及び平成14年度は,同部に所属していたBが,それぞれ講師を務めた(甲9〜11,17〜20,乙7の1,7の3,8の1,8の3,9の1,9の2,15)。
イ 維持講習における講習資料は,講師を務める者が準備して被告工業会に提出し,被告工業会において,同年度に行われる複数の講習に係る講習資料を合綴し(以下,合綴されたものを「講習資料集」という。),受講者に配布している(甲9〜11,17〜20,乙7の1〜7の5,8の1〜8の6,9の1〜6,12,15)。
 原告は,講師を務めた平成10年度から平成12年度の本件講習について,講習資料を作成した(それぞれ,「10年度資料」,「11年度資料」,「12年度資料」という。なお,被告らは,これらの資料が編集著作物であるとの主張もするところ,これらの資料は,他の文献等の記載を引用する部分もあるが,編集著作物であるとは認められない。)(甲9,17,20,乙7の3,8の3,9の2)。
 Bは,講師を務めた平成13年度及び平成14年度の本件講習の講習資料である13年度資料及び14年度資料の作成に当たり,本件講習の12年度資料を利用した。そして,12年度資料の大部分の記述をそのまま用いて,13年度資料を作成し,それを基に14年度資料を作成した。13年度資料及び14年度資料は,12年度資料の複製物である(甲17〜19,乙4の1,5の1)。
ウ 12年度資料作成時に,原告を著作者とする旨の原告及び被告会社間の契約や,従業員作成の著作物について当該従業員を著作者とする旨を定めた被告会社の勤務規則等は存在しなかった(弁論の全趣旨)。

2 争点
(1) 12年度資料について,職務著作として被告会社が著作者となるか。(争点1)
(2) 原告は,12年度資料の複製について許諾していたか。(争点2)
(3) 被告らによる口述権侵害の有無(争点3)
(4) 被告らによる氏名表示権侵害の有無(争点4)
(5) 被告らによる同一性保持権侵害の有無(争点5)
(6) 原告の損害(争点6)
(7) 謝罪広告の可否(争点7)
(8) 不当利得返還請求権の有無(争点8)

3 争点についての当事者の主張(…省略)

■第3 争点に対する判断
1 争点1(12年度資料について,職務著作として被告会社が著作者となるか。)について
 原告が12年度資料を作成したことは,当事者間に争いがない。被告らは,原告が,被告会社の業務に従事する者として12年度資料を職務上作成したものであり,職務著作としてその著作者は被告会社となる旨主張するので,以下,12年度資料の作成経緯,内容等の事実関係を検討した上,職務著作の成否を検討する。
(1) 事実認定(…省略)

(2) 職務著作の成否についての検討
 被告会社において,従業員の作成した著作物について,当該従業員を著作者とする旨を定めた勤務規則等がないこと,及び,原告の作成した12年度資料について,原告と被告会社間で原告を著作者とする旨の契約が締結されたものでないことは,当事者間に争いがない。そこで,12年度資料について,その作成が被告会社の発意によるものか,被告会社の業務に従事する者(原告)が職務上作成したといえるか,被告会社名義で公表され,又は,公表されるべきものであったかを検討した上,職務著作として被告会社が著作者となるか否かについて判断する。

ア 被告会社の発意
(ア) 著作権法15条所定の職務著作が成立するためには,当該著作物が法人等の発意に基づいて作成されたことが要件とされるところ,法人等の発意に基づくとは,当該著作物を創作することについての意思決定が,直接又は間接に法人等の判断に係らしめられていることであると解される。
(イ) この観点より検討すると,12年度資料は,以下のとおり,被告会社の発意に基づいて作成されたものであると認められる。
 すなわち,被告工業会の実施する維持講習の講師を務めることは,前記のとおり,被告工業会から被告会社に対する依頼を受けて,被告会社において社外用務応嘱として人事部長の承認を受けて行われるものである。平成12年度の維持講習の依頼に対する承認手続は,平成10年度及び平成11年度の場合と同様,社外用務応嘱承認願の文書を提出して行われており,同文書には,講演のテーマが明示されている。また,講習資料の作成は,被告工業会から被告会社に対する講師派遣の依頼文書に記載された講習テキスト作成の依頼に基づいて行われるものであり,前記社外用務応嘱承諾願にも,業務として,講習資料を準備する必要があることが示されている。そして,講演のテーマは,「空調技術の最新動向と計装技術」であり,原告が所属していた被告会社計装システム部の所掌業務に密接に関連するものであるところ,同テーマや,維持講習の趣旨からすれば,講習資料については,講師である原告の経験や,空調技術,計装技術の分野における最新動向に関する被告会社内の資料等を素材として作成されることが予想される性質のものであると解される(10年度資料には,被告会社の社内資料が用いられており
,その内容は11年度資料及び12年度資料にも引き継がれているが,原告は,社内資料使用について担当部署の了解を得た旨主張しており,被告会社内で維持講習の講習資料に使用されることが了承されていたことが推認される。)。そして,原告が講師を務めることとなった初年度である平成10年度においては,原告の上司であったDが,原告に対し,被告工業会から被告会社に対する講習テキストの作成の依頼に基づき,期限までの講習資料作成を指示している。
 これらの事実によれば,維持講習のための講習資料作成は,被告会社において,維持講習の講師を務めることとともに用務の一つとして認識され,その内容や性質についても検討され,社外用務として承認されるということができる。したがって,被告会社が当該社外用務を承認し,それを原告に伝えることをもって,講習資料作成についての被告会社の判断がされたと解するのが相当であり,12年度資料の作成について,被告会社の発意を認めることができる。
(ウ) 原告は,テーマの設定や講習資料の具体的な構成の選択に被告会社が関与することはなく,社外用務応嘱承認願も原告自身が記載したものにDが押印をするのみで決裁に付されるのであって,講習資料の創作についての企画をしているとはいえない旨主張する。
 しかし,テーマの設定や講習資料の具体的な内容構成について,被告会社の関与や指示がないとしても,テーマの内容や維持講習の趣旨から,講習資料の性質やそこに盛り込まれる内容について想定できることは前記のとおりである。しかも,原告は,平成10年度の維持講習時には,被告会社計装システム部の担当課長,平成11年度は同部の参事,平成12年度は同部の担当部長の職にあった者であり(甲17,34,乙7の3,8の3,9の2),具体的な指示がなくともテーマに沿った内容の資料を作成することができる者と被告会社内において認識されていたのは当然のことであるから,被告会社において,社外用務として講習資料作成を行わせることが相当であるかを検討して,これを承認することは,当該資料作成自体も被告会社の判断によるものであるということができる。したがって,原告の前記主張を採用することはできない。

イ 被告会社の業務従事者が職務上作成したものであること
(ア) 原告は,12年度資料の作成時,前記(1)オ(イ)のとおり,被告会社計装システム部の担当部長の職にあったものであり,被告会社の業務従事者であったということができる。
(イ) 前記(1)エ及びオのとおり,維持講習の講師を務める際には,被告工業会から被告会社に対して,講習資料の作成と数回の講演実施を担当する講師として派遣依頼がなされ,被告会社内で社外用務応嘱として内容等が検討されて承認されるという手続が履践されており,社外用務として承認された場合には,勤務時間内にその業務を行うこと並びに被告会社の人員及び機材を用いることが認められている。また,平成10年度の維持講習において,原告が怪我による入院治療のために自ら講演できない事態となった際には,被告会社の業務命令により,被告会社の他の従業員が原告に代わって講演を行っている。そして,平成12年度の維持講習は,平成10年度,平成11年度と引き続いて,「空調技術の最新動向と計装技術」をテーマとする本件講習を担当するものであったところ,同テーマの内容は,被告会社の業務と密接に関連するものである。さらに,前記(1)イのとおり,被告会社では総合職技術系従業員の2割前後の者が計装士の資格を有しており,計装士が被告会社において業務上重要な資格と評価されているところ,計装士に5年ごとに受講することが義務づけられている維持講習も,同様に,被告会社において重要なものと位置づけられていたと解される。
 これらのことからすれば,維持講習の講習資料作成は,講師として被告会社から派遣される者の職務として行われるものであるということができ,原告においても同様であって,12年度資料は,原告の職務上作成されたものと認めることができる。そして,このことは,原告が,講習資料の作成に当たり,現実には,勤務時間外の時間をも費やしていたとしても,左右されるものではない。

ウ 公表要件
 維持講習の講習資料集の体裁は,前記(1)ウ(ウ)のとおりであり,これによれば,12年度資料には,講師名として原告の氏名が表示されるのみであり,著作名義については,その表示がなされていないか,あるいは,講習資料集の表紙に表示されている被告工業会の著作名義と解すべきであり,被告会社の著作名義で公表されたと認めることはできない。
 この点,被告らは,12年度資料の表紙に講師名として原告の氏名が表示されているが,被告会社の名称も付されており,被告会社が講習資料の内容について最終的な責任を負うことが表示されているから,被告会社の著作名義と評価することができると主張するとともに,仮に,講師としての表示が著作名義と評価できない場合には,著作名義を表示しないことを選択したということができ,公表するとすれば被告会社の著作名義が表示されることが予定されているものであるから,職務著作の公表要件を充足する旨主張する。
 しかし,前記のとおり,12年度資料の表紙の講師名の記載は,講師と資料作成者とが異なることもあり得ることからすれば,講習資料の著作者を示したものとは認め難いし,加えて,講師名に付された被告会社の名称は,原告の所属する会社名を記載したにすぎないものと理解されるのが通常であって,被告会社が講習資料の内容について最終的に責任を負うことを表示したものと理解されるのは困難である。また,12年度資料は,被告会社の著作名義を付することなく平成12年度の維持講習の講習資料集としてまとめられて受講生に配布されており,既に公表されているのであって,被告会社の著作名義で公表されるべきものということもできない。したがって,被告らの主張は,いずれも採用することができない。

エ 小括
 以上からすれば,12年度資料は,被告会社の発意のもと,被告会社の業務従事者である原告が,職務上作成したものであると認めることができるが,被告会社名義で公表されておらず,公表されるべきものであったということもできないから,被告会社の職務著作とはいえず,被告会社がその著作者となるとは認められない。


2 争点2(原告は,12年度資料の複製について許諾していたか。)について
 12年度資料は,前記1で検討したとおり,原告の著作物であると認められるところ,被告らは,12年度資料を複製して13年度資料及び14年度資料を作成したことについて,原告の許諾があった旨主張するので,以下検討する。
(1) 事実認定(…省略)

 検討
 (1)で認定した事実に,1(1)で認定した事実を併せて検討すると,原告は,Bが被告会社における職務として維持講習を行うに当たり,12年度資料を複製して,13年度資料及び14年度資料を作成することを,黙示に許諾していたものと認めることができる。
 すなわち,前記のとおり,原告は,上司であるDからの指示を受けて,平成13年度から維持講習の講師をBと交替するとともに,Bに対し,12年度資料の原稿の電子データを交付していること,原稿をBに交付すること自体も,Dにより,Bに引き継がせるものとして指示されたこと,維持講習のための講習資料作成は,同講習の講師を務めることとともに,職務上なされたものであること,維持講習は5年間同一のテーマで行われ,その間の講習資料の大幅な変更は予定されていないことが認められるところ,これらの事実に加えて,12年度資料を単に参照するのみであれば,原告に原稿の電子データの交付を求める必要はなく,原稿の引継ぎの指示に基づいて原告から何らの留保もなく電子データが交付されたことからすると,原告においても,12年度資料の原稿を複製して平成13年度以降の維持講習の講習資料を作成するものと認識していたと理解できる。これらのことを併せて考慮すれば,原告において,Bが,職務上,13年度資料及び14年度資料を作成するために,12年度資料を複製することを許諾していたと解するのが相当である。
 さらに,原告は,平成13年11月,13年度資料の作成に関し,Bから10万円の交付を受け,平成15年7月には,14年度資料の作成に関し,Bから再度10万円を受領しており,また,原告は,13年度資料及び14年度資料を自己の著作物としてリストアップするために,これらの資料の閲覧をBに要求した旨述べている(甲34)のであって,これらの事情は,12年度資料の複製を2度にわたり許諾していたことと整合するものである。
 原告は,12年度資料の電子データは参考に渡したのみであり,Bからの金員も資料貸与料として受領したとして,複製の許諾はしていない旨主張する。
 しかし,12年度資料を単に参考にするのであれば,既に印刷されたものを参照することで足り,被告工業会から写しの交付を受けるなどの方法も考えられるから,Dが原告に引継ぎを指示する必要がないことは,前記検討のとおりであるし,他の文献や資料などと同様に12年度資料を参考にするためだけを目的として「貸与料」が支払われ,しかも,それが,平成13年度及び平成14年度の2回にわたり,合計20万円も授受されることも極めて不自然であるから,原告の主張を採用することはできない(なお,原告が,その後,被告会社と紛争を生じる段階に至って12年度資料の複製を許諾していないと述べることが,上記の認定判断を左右するものではないことは明らかである。)。
 したがって,原告は,13年度資料及び14年度資料の作成について,12年度資料の複製を許諾していたと認められるのであるから,13年度資料及び14年度資料は12年度資料の複製物と評価できるものであるものの,これらの作成や交付は,12年度資料についての原告の複製権を侵害するものではないと認められる。

3 争点3(被告らによる口述権侵害の有無)について
 原告は,被告らにおいて,平成13年度及び平成14年度の維持講習の際に,12年度資料を複製した13年度資料及び14年度資料を,原告の許諾なく使用し,不特定多数又は特定多数の公衆に対して口頭で伝達したものであり,原告の有する12年度資料を公に口述する権利を侵害した旨主張する。
 しかし,維持講習の講習資料は,講演の内容を示し,解説しているものではあるが,その性質上,内容が朗読等によって口述されるものではないのであって,同資料をもとに講演をすることをもって,同資料を口述したということはできない(なお,13年度資料及び14年度資料が,維持講習において実際に口述されたことを認めるに足りる証拠はない。)。
 したがって,被告らが13年度資料及び14年度資料を原告の許諾なく使用したか否か等を検討するまでもなく,原告の主張する口述権の侵害は,到底認めることができない。

4 争点4(被告らによる氏名表示権侵害の有無)について
 原告は,被告らにおいて,12年度資料を複製した13年度資料及び14年度資料を使用した際,Bの氏名を表示して原告の氏名を表示しなかったものであり,原告の氏名表示権を侵害した旨主張する。
 しかし,前記1(2)ウにおいて検討したとおり,12年度資料の表紙に講師名として記載されている原告の氏名の表示は,あくまでも当該維持講習の講師名を表示するものであって,12年度資料の著作名義を表示するものとはいえず,氏名表示権の,著作者名を表示するかしないかを選択する権利であるという側面からみた場合,原告は,12年度資料について,少なくとも,原告の氏名を著作者名として表示しないことを選択しているものと解される。そうすると,13年度資料及び14年度資料に講師名としてBの氏名を付するとともに,その他は,12年度資料及び同資料を含む講習資料集と同様の表示をして,平成13年度及び平成14年度の維持講習の講習資料集を作成し,使用することは,著作者名を表示しないこととした原告の措置と同様の措置をとっていることになるから,著作者名の表示に関する原告の当時の意思に反するものではなく,原告の氏名表示権を侵害するものとはいえないと解するのが相当である。
 したがって,原告の主張する氏名表示権の侵害は認められない。

5 争点5(被告らによる同一性保持権侵害の有無)について
(1) 13年度資料及び14年度資料における変更箇所
 13年度資料及び14年度資料は,変更箇所一覧表の「13年度資料」,「14年度資料」の各欄下線部分記載のとおり(ただし,変更箇所一覧表の番号11については,「※」を付して示したとおり,記載内容は別添1及び2のとおりである。),対応する「12年度資料」欄の記載に変更を加えている(当事者間に争いはない。)。
(2) 検討
 被告らは,前記(1)の変更箇所のうち,一部については,原告の創作に係るものではなく同一性保持権侵害を主張することができない部分であるか,又は,著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められるものであるとし,他の部分についても,同一性保持権の侵害となる改変ではない旨主張するので,以下,検討する。
ア 著作者の有する同一性保持権は,著作物が,著作者の思想又は感情を創作的に表現したものであり,それによって,著作者に対する社会的な評価が与えられることから,その同一性を保持することによって,著作者の人格的な利益を保護する必要があるとして設けられているものであり,「意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする。」(著作権法20条1項)という文言でその趣旨が表現されているものと解される。そして,意に反するか否かは,著作者の立場,著作物の性質等から,社会通念上著作者の意に反するといえるかどうかという客観的観点から判断されるべきであると考えられる。そうすると,同一性保持権の侵害となる改変は,著作者の立場,著作物の性質等から,社会通念上著作者の意に反するといえる場合の変更がこれに当たるというべきであり,明らかな誤記の訂正などについては,そもそも,改変に該当しないと解されるところである。
 本件で同一性保持権侵害の有無が問題となっている12年度資料は,維持講習の「空調技術の最新動向と計装技術」をテーマとする講習の資料であり,計装士の資格を有する者に対して,講習内容についての事実を正しく伝え,また,関連する最新の情報を伝えるとともに,講演者の個性ではなく当該分野での経験に基づく専門知識を伝達することが期待され,予定されている性質のものである。さらに,5年間同一のテーマで行われる維持講習の資料であって,合綴されて講習資料集としてまとめられるという性質上,他の年度の講習資料と分量的な差異がそれほど生じないようにすることも求められていると解される。そして,次年度の資料作成のために複製が許諾される場合には,講演の時期に合わせた修正がなされること,用語などについても,当該分野で一般的に用いられている最新のものを選択することが求められているものである。以上に加えて,著作者である原告も,同様に維持講習を受けた経験を有し,既に2年間維持講習の講師を務めているのであるから,上記のような客観的事情を十分認識して,講習資料を作成したものであると推認される。
イ また,アで検討した事情は,同一性保持権侵害の例外として認められる「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」(著作権法20条2項4号)に該当するか否かにおいても,同様に考慮されるべきものであると解される。
ウ そこで,このような,12年度資料についての性質,著作者である原告の立場を踏まえ,個々の変更箇所について検討する。
(ア)〜(ソ)…省略
エ 小括
 したがって,変更箇所一覧表記載の各変更部分については,いずれも,同一性保持権の侵害とはならない。

6 争点8(不当利得返還請求権の有無)について
 原告は,12年度資料の著作権を有するものであるから,被告らが,12年度資料を不法に利用したことによって得た収益及び講師報酬は,不当利得となり,原告は,600万円の不当利得返還請求権を有する旨主張する。
 原告は,前記1で検討したとおり,12年度資料の著作権を有するものではあるが,前記2ないし5で検討したとおり,自ら12年度資料の複製を許諾しており,被告らによる,12年度資料について原告が有する著作権(複製権,口述権),著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)の侵害は認められないから,被告らにおいて,12年度資料の利用により,法律上の原因なく利益を受けたとは到底認められず,その利益の内容等を検討するまでもなく,原告の被告らに対する前記不当利得返還請求は認めることができない。
 したがって,原告の主張を採用する余地はない。
7 まとめ
 そうすると,他の点について論ずるまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないことになる。
第4 結論
 以上の次第で,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。


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